池川木材工業が木屑を材料を乾燥させるための熱源として利用し始めたのは昭和53年頃。ゲタを生産する際に出る木屑やオガクズの処理をする為、小型水冷式の焼却炉を設置したのが始まりだった。炉を冷やした水が熱湯と蒸気になって焼却炉の蒸気口から勢いよく噴き出していた。それを見た会長が"もったいない"と思い、社内暖房の熱源として利用し始めたのが発端。専門知識がなく、従業員との試行錯誤の末、中古車のラジエターを使って熱湯をパイプに引き込み、木材の乾燥質や塗装を行う部屋に温風を送り込んだ、手作り乾燥施設を製作。初代の木質バイオマス乾燥設備は残念ながら昭和55年会社が全焼する火災で消失。しかし翌年56年には新社屋建設の際、同じようなタイプの水冷式乾燥設備を併設した。
木を燃やすと煙が出る。近年環境設備の流れに沿った施設の配備を余儀なくされてきたのも事実だ。初めての「木質バイオマス乾燥」から25年余り。まだ「エコ」や「環境保護」など全く問題になっていない頃から、知らず知らずに始まっていたイケモク式木質バイオマス乾燥。2年程前から検討を重ね、2007年1月に待望の木質バイオマス乾燥施設が完成した!
何故今「木質バイオマス」なのか?私も森林との共存を図って企業を立ち上げている経営者ですから、森林環境と経営を両立させていく企業形態を確立していく事が急務です。ここ数年「木質バイオマス」という言葉が多々聞かれます。これからは我々「森林企業人」が先頭に立ち上がらなくてはいけないと考えます。
木を加工すると木屑やバーク(樹皮)などが出ます。今までは”ただ燃やす”だけでした。しかし今からは違う!木材は捨てるところがない優良な再生可能資源です。もう”屑(クズ)”ではないんです。乾燥の熱源となり、残った木灰は土に返せば”土壌活性”として役立つ、利用効率の高い資源です。当社では自社山林から材料となる木材を調達→乾燥→製材・加工→卸販売に至るまで循環経営ができる日本でも数少ない木材企業です。木片の一つでも大切な資源と考え、森林保護と経営の最重要点として「バイオマス・プラント」を併設しました。今後日本の木材企業に「木質バイオマス」という言葉は、切っても切れないものになるのではないでしょうか。
昔苦労をして植林してきた方たちに感謝しつつ、その木を活かし加工・販売して得た売上を山元へ還元していくサイクルこそが森林保護と持続可能な経営が結びついた姿ではないでしょうか。それこそ木質バイオマスが生む最大の産物であると考えます。
池川木材工業の木質バイオマス乾燥施設では、燃料の自動投入システムにより24時間稼動が可能です。各種センサーによる管理で、最適な運転状態を保持しています。オーストリアと日本でリアルタイムでパソコンによる運転状況を監視し、各種データ収集を行っています。木質バイオマス乾燥の設備自体も、日本における圧力容器の認証を取得することができました。結果、高温水・蒸気の取出しが可能となり、プレヒーターによる燃焼効率もアップしました。
当社の木質バイオマス・プラントはオーストリアのポリテクニック社製の機材を採用。最大出力は約1500KW(約1,290,000kcal/h)。1機当りの乾燥ボリュームは約50m3(素材ボリューム)で、全3機で稼動しています。
ボイラーで熱した110℃の高温水をパイプで循環させる方式で、同じ水を繰り返し使う事になります。無駄な水を使うことがなく、まさに環境時代に適した設備と言えます。様々な試行錯誤と試験稼動を重ね、平成18年11月に本格稼動を開始しました。
木材の乾燥基準をクリアした輸入材に対抗する為には、約12%以下という含水率の木質材が必要になります。木質バイオマス・プラント(木質バイオマス乾燥)の導入により高温水供給を行うことで、木材の”内部割れ”や”変色”が少なく高品質な建築材の生産が可能になります。 ↓ 池川木材工業の木質バイオマスプラントは「高温水・中温乾燥」です。
左の表は自社製材製品の社内比を表したものです。
木質バイオマスプラントで乾燥させた木材は一定品質を保つことが出来る大きなメリットがあることが分かります。
左の画像は現在当社内の木質バイオマスプラントで熱源として利用しているチップやバーク(樹皮)です。固形の大きさは約10cm角×厚さ2cm程度なら問題なく使用できます。しかしバーク(樹皮)のように、長いものはシュレッダー等を用いて細かく粉砕する必要があります。オガクズなど細かいものはバックファイヤーの原因となる為燃料としては適しません。
燃料供給や炉内の温度等の管理をパソコンで遠隔監視しています。
燃料供給も自動投入により、24時間運転が可能になりました。
各種センサーにより最適な運転状態を保持し、トラブルなども最小限で抑えていくよう取り組んでいます。